人のこの多様に表出するジェンダーを深く理解するためには
生物学的な性別(sex)の発生メカニズムを理解しておかなくてはなりません。
性別は表向きは♂か♀、プラスかマイナス、0か1の2元的なもののように考えられ
どちらかにシンプルに分別されるもののように一見みなされます。
しかし、この単純と思ええるプラス、マイナスの間には無数の数値が存在します。
0と1を見立てたとろでコンピューターのソフトが0と1で
無限に組み立てられていくようなものとお考えください。
男と女の定義付けは実は極めて曖昧であり相対的な存在でもあるのです。
男と女はその間にある無限の空間に揺らぎながら彷徨っています。
概要
|有性生殖が人類の根源
人類は有性生殖を行う生き物です。
今日のジェンダーに関わる問題の発生はこの有性生殖に源を発します。
|有性生殖の誕生
生命はおおよそ35億年前に発生したといわれています。
そして約12億年前の珪藻類が有性生殖の起源とされています。
それまでは生命は単細胞であり分裂を基本とする無性生殖で子孫を残していました。
生命は有性生殖の仕組みを獲得したことで飛躍的な進化を遂げることになります。
有性生殖とは個体同士がセックスをしてDNAを交換する行為です。
では何故セックスが生命の進化を大きく促したのでしょうか?
|セックスは生き物の進化の原動力
有性生殖はお互いのDNAを提供し合い新たな個体を生みだします。
このDNA交換する際には自らのDNAの複製作業を行います。
DNAの複製時に確率的で微妙なコピーミスやDNAの損傷などが生じます。
コピーミスや損傷は致命的な欠陥に繋がることが殆どですが、
生存上非常に有利な別の形質を作りだすことが稀に起こります。
そこで獲得された有利な形質をもった個体は繁栄します。
旧態とした特質しか持ち合わせていない個体はやがて環境の変化や
ウイルスへの対応が出来ずに滅び去ってゆきます。
この繰り返しが気が遠くなるほどの時間を経ることによって
生命に大きな進化をもたらします。
|無性生殖は不利である
無性生殖はただ単に同じ個体が分かれ同じ個体がコピーされるだけです。
親の体質やDNAがそのまま受け継がれて変化が起こりません。
時にはウイルスなどに犯された身体をそのまま受け継ぐことになり
極めて環境の変化に弱くやがて絶滅してゆきます。
|セックスは人類進化の根源である
このようにセックスすることは無性生殖に比べて膨大なコストがかかるのですが、
変化をあえて取り入れることで将来的なリスクを回避する可能性を増大させます。
生命は多様化することで生き延びて発展を遂げ
究極的に進化した我々人類が生まれたのです。
有性生殖は生命発展の原動力そのものです。
即ちセックスは生命進化そのものといえます。
|人類の性分化
この有性生殖こそが人類の多様なジェンダーを生みだす根本的な要素なのですが
その性を決めるものは如何なるものなのでしょうか?
人類の性別の分化は実に複雑なプロセスを辿ります。
このプロセスは哺乳類ではほぼ同じような行程となります。
御存じのように人類の遺伝子は23対46本で構成されています。
男と女を分ける遺伝子はX染色体とY染色体です。
Y染色体を有する者が生物学的な男性と称されます。
22対44本は男女とも共通ですが、男性は23対目がXYのヘテロ型、
女性はXXのホモ型になっています。
セックス受精で精子と卵子は23本づつの染色体を合体させて新しい生命を創造します。
44+XX=女性、44+XYが男性として性分化してゆきます。
|初期設定は女
しかしここで特筆すべきは人の初期設定は女性であることです。
男性もすべて初期設定は女性であり、男性は女性をベースに
男性ホルモンによる上書きで作られてゆくと言うことです。
X染色体をもった受精卵は分裂とともにある時期に
作動して男性ホルモン(アンドロゲン)を分泌させて
本来女性へと進化すべき身体を男の体に変化させてゆくのです。
(テストステロンはアンドロゲンのひとつです)
もしアンドロゲンがはたらなければ肉体的には女性になってゆきます。